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マセラティクアトロポルテと暮らしてみませんか~ガンディーニの疾駆するオブジェ:そのインテリア

 これは、うるさいヒトがたくさんいそうな項目ですね。まずは「金時計」ですか(笑)。もう、内装は云うことありません。「華麗で豪華で洗練されてて結構シンプルな装備」、 終わり。てな感じなんですが、同じ「ガンディーニルックのクアトロポルテ」のなかでも、年次によって以下5段階の内装仕様が当店において確認されております。この項は順を追うと説明がし難いため、 あまり箇条書き風に整理せず、「ダラダラと」まいります。

 ・・・でも、いきなり箇条書き(笑)。
①:最初期の95年~96年序盤登録車
②:前期型の96年中盤~97年前半登録車
③:後期型の97年後半~99年前半登録車
④:エボルツオーネの99年後半~最終売れ残り車
⑤:同セリエスペチアーレ(2期あり)の全部

 これらを手作り感のある順(本当に組立作業工程や加工工程が多い順)に並べてみますと、
①→②→③→⑤→④となります。

 また、内装のパッと見の華麗さ(豪華さ・派手さ)では③→①→②→⑤→④ですね。
 これはあくまでも我々マイクロ・デポの主観ですが、同業者各位もおそらく同感して頂ける方、多いと思います。まあ、⑤も新車時だったら内装色によってはかなりの線にいきますね。
その場合③→⑤→①→②→④もありかと。なんのこっちゃ。まっ、その位のモンです。

 ④のエボルツオーネからすべてのシート(椅子)の装飾的なステッチ(縫い目:③までの時期のシートはイタリアの革工芸の粋を凝らした、超絶技巧の立体縫いが施されていました)が全廃され、 いささかビジネスライクなシートデザインになりました(それでも充分に豪奢なんですけド)。また、③で頂点を極めた木工細工芸でしたが、残念ながら、各部のスイッチ枠やノブ類など、 従来「ホンモノの木」で出来ていた小部品の大半が樹脂化され、ウッドパネルもその特徴だった質感が大幅に薄められ、「でらでらと」妖しく輝く感じから、「半ツヤ」の光沢になりました。 また、ある意味「ガンディーニ・クアトロポルテ」だけ(他のすべてのマセラティに採用されなかった)の特徴であった「ツヤ有り鋲打ちウッドステアリングホイール(ハンドルの表面に点々と 鋲が打ち込んであり左側にはカワイイカラーのマセラティエンブレムが埋め込まれている、なんとも華麗でクラシカルな演出)」が廃止され、なんでもない「半ツヤのウッドステアリング」になっちゃったのは、 私などはかなり悲しかったのですが、これは、意外と気にするヒト少ないようです。実は、こういうところがイタリアの職人芸の真骨頂だと思うんだけどなあ。逆にそれらの質感低下を補う意味もあってか、 各メーターパネルの書体が変更され、従前のありきたりのものから、クラシカルな香り漂う(いささかワザとらしいので、好みは分かれそうですが)ものになりました。装備面での決定的な違いは助手席 SRSエアバッグの追加とキーレスエントリー(やっと付いた:泣)がありますので、大書してあげたいところです。

 実は、構成的にはエボ系になりかけてるけど、あたかも対極に位置するように見えるのが③の後期型、俗に云う「エボ前最終モデル」というヤツです。これは、確かに我々マセラティの専門家が見ても、 納得の出来なんですね。伝統の手工芸と工業製品のハザマのギリギリを衝いています。そうでなくても「本革とウッドの洪水」と評されてきたビトルボ系マセラティなんですが、このクアトロポルテ後期型が その頂点であろう事は疑いを挟む余地はない様に思われます。ところが、コレ、日本国内における供給台数が他のモデルに較べて圧倒的に少ないんです。また、経年変化により、リセットが必要な個体がほとんどで、 そのリセット費用を勘案すると、「程度並」のエボより高価についてきます。長く大事にしたい方には向きますが、ガシガシ日常の足にしたい向きには③はもったいないのでむしろ④をお奨めいたします。

 ②はかつてポピュラーだった前期型ですが、さすがに経年で退役した個体が多く、まともなクルマの残存数はごく僅かです。経年で、店頭売り価格が200万円を切るものも昨今散見いたします。 しかしその多くは内装が(他の部位もだけど、ここは内装のコーナーなので:笑)完全に「終わって」おります。マセラティの売りの多くは、やはり華麗なインテリアにもあると我々は考えておりますが、 「内装なんかどうでもいい」の向きはチャレンジしてみてもいいでしょう。但し、内装の荒れたクルマで機関その他にお金を掛けてきたクルマというものは、欧州車の場合、ほとんど無いという事を 申し副えておきましょう。大体なんとか動く状態に持っていくだけでもう50万円~100万円、購入後数ヶ月以内に掛かる公算が大です。こういった格安マセラティの場合、「走行距離がいってる」ものと 「まあまあ」のものでは、どーんと距離が伸びていて「安い」ものの方が寧ろ数次に亘るリセットを繰り返しているケースが多く大事に愛情込めて乗られてきたケースも多いので、乗り潰すつもりなら、 むしろ「買い」であることを、そっとお教えいたしましょう。「エンスーの杜」さんや、「ヤフオク」さんなどをチェックして、出品車が(業者かその関係者ではなく)個人ユーザー所有のものであれば、 元の持ち主によくよくハナシを聞いた上で、見る価値はありそうです。むろん、当店にすべてお任せ頂ければリーズナブルプライスで「ガンディーニ・クアトロポルテ」の真髄を安心して楽しんで頂けます。 ホントは、コレが一番安上がりなんですけどね。当店の値段が高いと思ってらっしゃる方々も、未だ、多かろうとは思っておりますが(泣)、トータルすれば、結局お買い得だろうと自負しております (あっと云う間にその結論は出ます:笑)。

 ①は、ほぼ淘汰されて絶滅種に近い最初期型ですが、これは「量産試作型」の香りがほんのり漂う、我々の「マセラティ技術史」的には面白いモデルです。とにかく、なんかむりやり革装部を増量(笑) しようとしてまして、③にもないサイドシルとシートの間の分厚い革装ガーニッシュなど、意味ない(笑:現実に他のどのモデルにも付いてないけど、なんも困らない)けど、「付いてたら尚嬉し」感があるし、 そのくせ、デ・トマソ期の樹脂製ATセレクターパネルなんかが残ってるし、でもパワーシートのスイッチをいちいちシート色にあわせてわざわざ塗装までして作ってあったり(その後のモデルでは どのシート色でもスイッチは黒)はします。トランク内の内張りがもっとも顕著な違いでして、一切の成型カーペットを用いずに3次曲面の覆いをなんとかしようとしている(で、なんともなってない:泣) ところがヒジョーに微笑ましいです。また、エボ以前のモデル中、この①だけ、トランクフード内側に工具スペースが存在せず、別体の工具入れをなんとなくトランク内において置きます(④⑤のエボ系もそう)。 この全体的な緩さが70年代エキゾチックカーの味に似ていて私(岡本)は個人的には好きです。但し、パワーウインドーユニットや、ボンネットダンパーなど、この最初期モデルだけの構造を持つ部分が細かくあり、 また、それらの部品供給はもはやありません。大規模な改造加工が必要な場合が多々ありますので、(市場では、車輌本体価格は安めですが)安易にお求めになると、一旦壊れた場合、 なんも完成しない可能性が高いと思います。もちろん当店では、それらの諸問題に関する「解答」をすべてご用意してあることは云うまでもありません。

 ちなみに、上記①と②の初期型のみ、前席2脚の両方に、手動のランバーサポートが装備されており、かなり有用な実質的装備だっただけに、③の後期型以降省略されたのは、コストダウンのためなんだろうけど、 私のような腰痛持ちには、非常に悔やまれます。また、それとはうらはらに、③以降~エボ系最終までの日本向けモデルは、左右前席の座面のサイドが従来の皮革張りからアルカンタラ張りに変更され、 シートサイドとセンターコンソールの間で革同志が擦れることにより発生する、走行中の「軋み音」を低減させてあります。これは、この手の「低質音」を異様に気にする神経質な日本人顧客向けに、 コーンズさんがスペシャルオーダーした特殊仕様が元になっている模様。

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 続いて⑤、正式にはマセラティクアトロポルテエボルツオーネV6(若しくはV8)コーンズセリエスペチアーレ(あー、長い)といいます。V6をセイ・チリンドリ(6気筒の意)、 V8をオットー・チリンドリ(8気筒の意)と読めば更に長く(笑)なります。コーンズとは、現在日本でのマセラティ社の総代理店、コーンズ・アンド・カンパニー・リミテッドさんの事。 我々マイクロ・デポもマセラティ純正パーツの供給元として日頃お世話になっております。つまるところ、正規ディーラーのコーンズさんが日本向けに特注したスペシャル仕様といった意味です。
 要するに、フェラーリ社がマセラティ社を傘下に納めた、④のエボルツオーネ出現時には、出来るだけ「デ・トマソ臭」を抑えたかったといった事情(デ・トマソ時期のマセラティの低品質管理による 故障頻発神話を払拭したい。あの時期はマセラティ社の歴史から削除(泣)したい(ううっ!)といった気分の事)もあり、デ・トマソビトルボの象徴たる金時計を思い切って廃止したんです。 この決断はある意味(マセラティブランドは本来金時計のみで語られる様な安っぽいものではなく、もっとホネっぽい、男っぽいイメージ)正しい選択であったと私個人は思いました。しかし内心、 「商品としては、ヨワくなるのに」とも思っておりました。案の定、購入(予定)者は、ユニゾンで「時計、無いのー」の大合唱(笑)。結局、「日本向け限定車」として時計を付けさせたのが、 このモデルの出自なんだろうと思います。ついでに、カラード・ブレーキキャリパーだの、リアドアエンブレムだの、あんまり実質には関係ないものがおまけについてきます。 内装の仕様は④の非セリエエボに準じますが、金時計と、限定車を表す「シリアルプレート」がついています。

 このコーナーの最後にあたり、ここで、「ガンディーニ・クアトロポルテ」のインテリアについて、もう一度簡単に総括を。
①:量産試作車の味わい、レトロスーパーカーの香りがのぼりたつ逸品。原初の姿が崇高。
②:ほど良い手作り感・部品入手容易で互換性も高く現在でも実用車として維持しやすい。
③:全モデルの頂点に君臨する超絶技巧を工業製品としてのギリギリのラインで駆使した。
④:フェラーリの4ドアと思って買えば、金時計レスも気にならず、実用性能は最高で買得。
⑤:走行距離の少ない、「グッド・ヒストリー車」は蔵に仕舞っておきましょう。家宝。

 要は懐具合とお好みに合わせて今ならまだかろうじて①~⑤のすべてが間に合いますので、好きなのを今のうちに買っておきましょう、ということです。未だマセラティに手を出しそびれてるイタ車 マニアのヒト、あとで気づくと、きっときっと後悔しますヨ。日本の外車中古車市場の歴史が、そう教えてくれているように思います。


補足:内装の色や素材について
 前期型と後期型の時期は、基本色がアイボリー(温かみのある白)、タン(ベージュ)、黒(重役室)が基本3色と思われますが、中には、ブルー(真っ青!)、グリーン(これまた、真っ緑:笑)、 グレー(女性用の靴みたいな色)などもみられます。

 エボ期は、外装同様に多様な内装色がカタログには用意されていますが、やはり基本は、アイボリー(アヴォリオ)、クオイオ(野球のグローブみたいな茶)、黒、あたりが基本3色。タバッコ(焦げ茶) を入れて四天王(笑)といったところか。前述のブルー、グリーン、グレーのほかにも、ネイビー(濃紺:これも結構ポピュラーかも)、ボルドー(ワインレッドに近い臙脂?これも意外と見るような気がする) など結構多彩です。これは、エボ期のディーラーである「コーンズさま」が顧客のオーダーをかなり細かく受けていた証拠でもありましょう。というわけで、そうとう「ハイセンス(皮肉ですヨ:笑)」な、 内外装の組み合わせに仕上がっちゃってるスゴイのが相当数あるので、「こまったちゃん」です。

 また、前期型・後期型では、シートステッチが複雑に入りくんでいる上、「ギョーザ縫い(あえて、ドレープをつけてランダムに出たとこ勝負で縫いこむ驚異の職人芸)」も随所に使われていますので、 淡色系では汚れると見られたモンじゃなくなります。

 エボ期のものは、アッサリした造形ですが、革表皮が非常に薄く繊細なので、露天置きで紫外線の長時間照射をクラっているモノや、おしり癖のよくない(笑)オーナーが乗っていたと思しきクルマは、 表面に細かい縮れジワが出来たうえに、ひび割れ、ハガれるといったトラブルに見舞われます。

 全期に亘って、黒、濃紺などの濃色系内装のものは、汚れこそ目立ちませんが、ダッシュボードやメータークラスターが縮む、反る、歪むなどのトラブルに見舞われやすいといった、特徴があります。

 また、製造時期や内装色によって、室内の「匂い」まで違うんです、マセラティの場合。こういった「官能的要素」は、ヒトにより評価や感じ方が分かれる項目だと思いますが、長くクルマに乗る上で、 非常に大事な要素と思われますので、「見た目」のみならず、現車を確認すべき項目だと考えます。ひとつハッキリといえることは、どれも、いわゆる「皆さんのイメージする革の香り(コノリーの香りが、 たおやかに上りたつ的な)」ではないことだけは確かですが、少なくともワタシはどの香りからも「癒されて」おります。


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